生命、エネルギーの源。ミクロの力ATP。

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エネルギーの源、ATP

人間が生命を維持し、活動していくためには、食事をして、エネルギーに変えて筋肉を動かしていかなければなりません。

筋肉の収縮に使用されるエネルギーはATP(アデノシン三リン酸)の分解によって得られています。

ATPは、アデノシン(アデニン+リボース)という物質に3つのリン酸基が高エネルギー酸結しており、分解酵素の働きでATPから1つのリン酸が離れ、ADP(アデノシン二リン酸)に分解されるときに生じるエネルギーを利用して、筋肉の収縮が行われていることになります。

そして、分解されてできたADPとリン酸は、食事して得られるエネルギーによって再びATPに合成され、ここでエネルギーの貯蔵が行われることになります。

また、ATPは、筋肉の収縮はもちろんのこと、細胞の中のいろいろな化学反応を進行させる、嗅いや味を感じる、あるいはDNA(遺伝子)の複製まで多くのことに用いられています。

こうしたATPは、体内にはわずか数十グラム、約3分間分運動に相当する量しか存在しませんので、常に体内ではATP、ADPの合成、再合成を繰り返し、1日で体重相当のATPを合成していると言われています。

1キログラムのATPを合成するためには、24キロカロリーのエネルギーが必要であり、そのためには36キロカロリーのエネルギーを含む栄養素が必要です。ATPに移行しないエネルギー12キロカロリーは熱になります。

1キログラムのATPが分解される際は、14.6キログラムのATPのエネルギーが放出されます。

身長160センチメートル、体重56キログラムの30代女性の場合、1日当たりの基礎代謝は1200キロカロリー程度ですので、基礎代謝すべてがATPの分解により供給されると仮定すると、1日に82キログラムのATPが合成・分解されていることになります。

アデノシン三リン酸

エネルギーの産生

体内で継続して合成されるATPには、いくつかの合成経路があります。

大きく分けて有酸素性エネルギー代謝と無酸素性エネルギー代謝(クレアチンリン酸系や解糖系)です。

これら3つの経路にはそれぞれ特徴があり、運動時には運動強度や運動時間により、有酸素性エネルギー代謝と無酸素性エネルギー代謝が分担してエネルギー源を供給しています。

それぞれの特徴は、

有酸素系

:持続的に小さなエネルギーを生み出す

この経路では、ピルビン酸や脂肪が分解し遊離脂肪酸から生成されたアセチルCoAがミトコンドリア内でTCA回路(トリカルボン酸回路)に取り込まれ、複雑な過程を経て処理されます。その後、電子伝達系に入り、そこで多くのATPが再合成されます。

この経路は大変複雑であり、また代謝の過程で酸素を必要とする為に、酸素を必要としないクレアチンリン酸系や解糖系と異なり瞬間的なエネルギー供給には不向きです。

グルコース1分子から38分子ものATPを産生できるため、有酸素系のATPの再合成によって長時間の運動が可能となります。

なお、この過程は酸素を必要とするため有酸素性エネルギー代謝と呼ばれています。

クレアチンリン酸系(ATP-CP系)

:瞬発的で大きなエネルギーを生み出す

ATPはごく少量しか筋肉中に貯蔵されていないため大きな力を生み出すと筋内のATPは瞬く間に涸渇してしまいます。そこで、ATPの消費が激しい器官においてはATPを産生する機構が備わっています。

クレアチンリン酸系とは、筋肉内のクレアチンがリン酸と結合してクレアチンリン酸となり、ADPにリン酸を与えてATPを再合成するという働きを担っています。

しかしながら、クレアチンリン酸の貯蔵量も限られており、クレアチンリン酸系の持続時間は10秒程度であると言われています。

解糖系(乳酸系)

:比較的早く、ある程度大きなエネルギーを生み出す

解糖系は酸素を使わずにグリコーゲンを乳酸に分解してエネルギーを生成させます。

筋内に貯蔵されている炭水化物、すなわちグリコ―ゲンはピルビン酸に分解されます。

ピルビン酸はミトコンドリアで代謝されますが、急激にグリコーゲンが分解すると、すなわちエネルギー需要が高まった状態では、ピルビン酸は一時、嫌気的に乳酸へと還元されます。

このグリコーゲンがピルビン酸へと分解され、そして乳酸へと還元される一連の反応経路を乳酸系と呼び、この時に発生するエネルギーがATPの再合成に用いられます。

このATP合成はTCA回路によるATP合成の約100倍の速度を持つため、激しい無酸素運動などでは解糖系によるATP合成が活発になります。

なお、解糖系では45~90秒程度最大限の筋収縮が可能であると言われています。

グルコースから解糖系によって1分子あたり2分子のATPを産生されます。

エネルギー代謝

スポーツにおけるエネルギー代謝

エアロビクスやウォーキング、ランニングなど3分を超える運動や低~中等度の身体活動は、糖有酸素性エネルギー代謝で、極めて瞬時に高パワーで行われる運動場面、例えば、サッカーのシュートやテニスのサーブ、砲丸投げ等は、無酸素性エネルギー代謝のクレアチンリン酸系(ATP-CP系)によって合成されたATPによって賄われています。

また、強度の高い場面を持続する運動、短距離走や重量挙げ等は、血糖やグリコーゲン等の糖質を無酸素性エネルギー代謝の解糖系(乳酸系)によって合成されたATPによって賄われています。

ある一定の持続時間が必要となる競技では、複数のエネルギー代謝システムを組み合わせることになります。

つまり、瞬時に高パワーが要求される砲丸投げ等のパワー競技はクレアチンリン酸系(ATP-CP系)により、30秒~1分間ほど継続する競技や短距離走等は解糖系(乳酸系)とクレアチンリン酸系(ATP-CP系)のエネルギーにより、そして、90秒から3分間ほど継続する競技や中距離走や体操等は解糖系(乳酸系)と有酸素性エネルギー代謝によるエネルギーによって賄われていることになります。

長距離走では主に有酸素系を使っていますが、スピードを高めて走る為には解糖系やクレアチンリン酸系(ATP-CP系)といった無酸素性エネルギー代謝も使う必要があり、3種類のエネルギー代謝システムを併用ながら走ることになります。

また、フルマラソンにおいては、トップランナーは2時間程度で走りますので、無酸素運動の比重が大きいですが、4時間程度で走る一般ランナーは有酸素運動の比重が大きくなり、同じフルマラソンでもトップランナーと市民ランナーでエネルギー代謝及び運動スタイルが異なるといえます。

運動時間エネルギー代謝スポーツの種類
30秒以下クレアチンリン酸系サッカーのシュート、テニスのサービス、砲丸投げ、100m走
30秒~1分30秒クレアチンリン酸系+解糖系重量挙げ、200m走、400m走、100m競泳、スピードスケート(500m、1000m)
1分30秒~3分解糖系+有酸素性800m走、体操競技、ボクシング、レスリング
3分以上有酸素性長距離走、スケート(10000m)、1500m競泳
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