あなたは本当に肥満なのか?
現在国民のエネルギー摂取量は全国平均で10パーセント近く上回っているとされています。
こうした中で、家庭や職場などでは色々な作業・仕事が機械化・省力化され益々エネルギーの過剰摂取の傾向が強くなり、肥満の増加やそれに伴う生活習慣病の増加が危惧されています。
その反面、特に若い女性の間での極度のダイエットによる不健康なやせも多くなってきています。
そもそも「肥満」とはどのような定義なのでしょう?手元の国語辞典によると「体が肥え太ること」とかなりそのもの(「肥満」じゃなくて「肥太」だったらもっと凄いインパクト!)。
一言でもっともらしく言えば、「摂取エネルギーと消費エネルギーの収支関係が摂取エネルギー過多の状態。もしくは、その蓄積」となるのではと考えます。
また、数値的には「体重が標準体重より20パーセント以上多い場合が肥満症」とされているようです。
ではそもそも、「標準体重」とはどうやって算定するのでしょうか?
私の思春期には「身長(センチメートル)-100」だったと記憶していますが、いつのまにか「身長(センチメートル)-100)×0.9」となり青ざめたこともありました。
現在主流となっているのは、WHOが推奨するBMI(Body Mass Index)です。BMIは下記の算式で求められます。
- BMI=体重(キログラム)÷{身長(メートル)×身長(メートル)}
日本肥満学会ではBMI=22を標準。BMI=26.4以上が肥満、BMI=20未満がやせと提唱しています。
BMI=22を標準とすると標準体重は下記の算式で求められます。
- 標準体重=身長(メートル)×身長(メートル)×22 となります。
ちなみに、身長160センチメートルの場合の標準体重は1.6×1.6×22=56.32キログラムとなり、67.584キログラムkg以上が肥満となります。
ここまで読まれたらお気づきだと思いますが、BMIでは年齢や性別を考慮していませんので、BMIと併せて、厚生労働省の「肥満とやせの判定図」も参考にされてはと思います。
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(参考までに20~29歳・30~39歳の女性の判定図を載せております。)
あなたに必要なエネルギー量は?
肥満を一言で、「摂取エネルギーと消費エネルギーの収支関係が摂取エネルギー過多の状態。もしくは、その蓄積」と定義しましたが、それでは一体、摂取エネルギーはどのくらいが目安なのでしょうか?
現在では、下の算式で1日のエネルギー所要量が求められます。
- エネルギー所要量=1日の基礎代謝量×生活活動強度=基礎代謝基準値×体重×生活活動強度
性別・年齢階層別の基礎代謝基準値と生活活動強度を下記に掲載していますので、算出されてみてはと思います。
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ちなみに、前記で身長160センチメートルの場合の標準体重は1.6×1.6×22=56.32キログラムとなり、67.584キログラム以上が肥満となるとしていましたが、この人物を30歳の女性で、一般的な主婦あるいは事務職であると仮定して、エネルギー所要量を計算してみましょう。
国民の大部分は下記に掲載している「生活活動強度Ⅱ(やや低い)」に該当し、一般的な主婦・事務職の方もこの分類に含まれますので、生活活動強度は1.5を適用することになり、標準体重(56.32キログラム)の方のエネルギー所要量は次のとおりとなります。
- エネルギー所要量=56.32×21.7×1.5=1,833キロカロリー
となります。しかしながら、今日では生活活動強度は低下しており、国民の望ましい目標としては、「生活活動強度Ⅲ(適度)」とされていることから、理想的なエネルギー所要量は生活活動強度の倍数を1.5ではなく1.7を適用させた下記のエネルギー所要量と考えます。
- エネルギー所要量=56.32×21.7×1.7=2,077キロカロリー
チョッとだけ食べられる食事の量が増えたと喜んでいる方!当然のことですが、今以上運動などをして望ましいエネルギー消費を行わないと・・・・
脂肪はどこにつくか?
身体につく脂肪は、古今東西、老若男女を問わず悩みの種ですね。脂肪がどこから付いていくかというと、まずは肝臓!そして、内臓、最後に皮下といった順だそうです。
つまり、皮下脂肪一杯のおでぶさんは、肝臓や内臓も脂肪一杯と考えてもおかしくありません。
なんとなく体がだるい、疲れやすい、吐き気がする、右わき腹が張るなどの症状が出たら脂肪肝を疑い、病院へ直行したほうがよろしいかと思います。
ただ、この脂肪肝は自覚症状があまりないので、ついつい「仕事が忙しかったので身体がだるいのだろう」とか「食事も摂らず飲んでばかりいたので吐き気がするのだろう」と見過ごしがちです。そうなると内臓へ脂肪がつき出すことになります。
内臓と言っても、栄養を吸収するための臓器である小腸をスッポリと包んで支えている腸間膜に脂肪が付くようになります。
この腸間膜についた脂肪細胞の中性脂肪はグリセロールと遊離脂肪酸に分解されます。
グリセロールは排泄あるいは再利用されることになりますが、遊離脂肪酸は肝臓へ流れ込んでいきます。
流れ込んだ遊離脂肪酸の一部は筋肉などに運ばれエネルギー源として活用されることもありますが、余りにこの遊離脂肪酸が大量であると、肝臓はこの余った遊離脂肪酸を原料にコレステロールを大量に合成して血液中に流し込むことになります。
そうすると当然、血中の脂肪分は増加しドロドロ血液になってしまいます。
この後は、皆さんの想像どおりです。こう考えていくと、悩みの種どころではなく大問題です。
体型別のエクササイズを紹介していますが、中には「お腹周りは少々ポッコリ出ているけど、肥満という程でもないから、ウエイトトレーニング中心のエクササイズでいこうか」と考えている方も多いかと思います。
肥満というと極端に言うと顔から上下半身まで脂肪がびっしりで俗に言う「おでぶさん」をイメージします。しかし、そういった方は当の本人も外見上、内面上少なからず危機感を覚えているのは確かだと思います。
しかしながらポッコリお腹の人は意外と「お腹が出ているのは運動不足の上、ビールを飲みすぎただけ」「年も年だから貫禄も必要!」「腹筋でもすればすぐに引っ込むさ」と軽く考えている人が多いのも事実です。
体型別のエクササイズでは分類できなかったそのポッコリお腹も少々危ないところが・・・
おでぶさんの元になっているのは皮下脂肪(そうですお腹を摘むと掴める皮膚+アルファのアルファ部分)、そして、ポッコリお腹の元になっているのは、消化器系の内臓の周りにビッシリと付いた内臓脂肪(内臓脂肪と言うだけあって内臓が集中しているお腹にしか溜まりません)です。
お腹は胸のように骨に覆われていませんから、皮下脂肪と内臓脂肪は十分溜まる余地があります。その上、お腹や背中の筋肉群が衰えてくるとポッコリ、ダラリとしたお腹になってきます。
この皮下脂肪と内臓脂肪、同じ脂肪細胞ですが性格は若干違っているようです。一般的には内臓脂肪が皮下脂肪に比べて活発だと言われています。
よく内臓脂肪は普通預金に例えられ、皮下脂肪は定期預金に例えられます。
これは付きやすく取れやすい性質の内臓脂肪と一度付いたらなかなか取れない性質の皮下脂肪の違いからこう例えられています。
もうひとつ重要なのは、内臓脂肪は生活習慣病の元となる悪性の物質を生成するのも皮下脂肪に比べて格段に活発であると言うことです。
例えば、インスリンの作用を低下させる物質や血栓を作り易くするPAI-1という物質を活発に生成しますし、また、血管の平滑筋の増殖を引き起こす物質や血圧の上昇を来す物質も生成すると言われています。
こういった物質は糖尿病、血栓症、動脈硬化・高血圧症といった生活習慣病を将来的に引き起こすことになります。
おでぶさん(皮下脂肪)も当然注意が必要ですが、軽く見られがちなポッコリお腹(内臓脂肪)はそれ以上に注意が必要となってきます。
では、どのくらいのポッコリから注意が必要なのでしょうか?一般的には男性であれば、ウエスト85センチメートルを超えると内臓脂肪が付いていると考えて良いようです。お腹を掴んでも皮下脂肪はないのにお腹がポッコリ出ている俗に言う隠れ肥満というのが一番要注意といえるでしょう。
さらに、
ア.中性脂肪が150ミリグラム以上、または善玉コレステロールが40ミリグラム以下
イ.血圧が最高130以上または最低85以上
ウ.空腹時の血糖値が110ミリグラム以上
の3つのうち2つに該当するとメタボリック・シンドローム(代謝異常症候群)と診断されます。
こういった数値が気にかかるようであれば、まずはかかりつけの医師への相談をお奨めします。
そして、どうやって内臓脂肪を減らすかという問題でありますが、基本は内臓脂肪を揺らして有酸素運動で燃焼させることです。ウォーキング、ランニング、縄跳びなどが有効だと思います。
これは、有酸素運動におけるエネルギー代謝の中で糖質(グリコーゲン)や脂質を分解する際、皮下脂肪より活発な内臓脂肪の方が活発に脂質を供給するためです。
だぶついたお腹を引っ込めるため日夜腹筋に励んだ方ならお分かりだと思いますが、皮下脂肪を減らすのは大変根気が要ることです。
しかし、内臓脂肪は付きやすいと同時に燃焼しやすい性格ですので、運動の効果を思った以上に実感でき、日頃の運動も継続できると思います。
欲を言えば1日30分以上の運動時間が欲しいところですが、いきなり30分の運動と言われても気後れするもわかりますので、普段の生活や職場の中でエレベーターやエスカレーターの使用を控えたりして身体を動かす時間自体を増やすように努めましょう。
また、内臓脂肪はホルモンの関係で男性の方が付きやすく(逆に女性ホルモンは皮下脂肪を付けやすい)、また、年齢を重ねると付きやすいといわれています。
中年以降の男性の皆さん!ウォーキング、ランニングの運動に加えて、家事の中で布団の上げ下ろしや洗濯物の取り入れ、買い物の付き添いでの散歩などを行うと内臓脂肪を減らす効果に加えて、夫婦円満にもなり一石二鳥の効果もあると思いますよ。
4.スポーツによるエネルギー消費量は?
今度は、どのような日常の活動やスポーツで、どのくらいエネルギーを消費するのでしょうか?これまで、30歳の女性で、仕事は事務職、身長160センチメートル、体重は標準体重の56.32キログラムの方を例に目安を立ててきましたので、今回もこの女性を例に求めてみる事にします。前記のとおり、この女性の望ましいエネルギー所要量は2,077キロカロリーでした。
下の算式で活動・運動ごとのエネルギー消費量が求められます。(今回は1分間での消費量を求めます。)
- エネルギー消費量=動作強度×(基礎代謝基準値÷1,440)×体重
前記の基礎代謝基準は1日当りでの数値ですので、今回1分間でのエネルギー消費量を求める事にしておりますので60分×24時間の1,440で割った1分あたりの基準値を使用いたします。
先ほどの女性が6時間パソコン等の事務をした場合のその仕事で消費するエネルギー量(1分当り)は、
- エネルギー消費量=1.6×(21.7÷1,440)×56.32=1.357キロカロリー
6時間に換算すると、
- エネルギー消費量=1.357キロカロリー×60分×6時間=488.85キロカロリー
となります。また、この女性がエアロビクスの45分のレッスンを受けた場合のエネルギー消費量(1分当り)は、
- エネルギー消費量=5.0×(21.7÷1,440)×56.32=4.242キロカロリー
45分間に換算すると、
- エネルギー消費量=4.243キロカロリー×45分=190.95キロカロリー
となります。
動作強度の目安を下記に掲載していますので、算出されてみてはと思います。
つまり、動作強度の強いスポーツや日常生活活動を長時間行うと必然的にエネルギー消費量が増えることになりますが、心肺機能や筋力等を無視して無茶に行うと怪我の元です。
今回下記の動作強度の表を作成していて、思わぬ動作やスポーツが結構エネルギー消費しているのだなと改めて感じました。たとえば、掃除機を使わない掃除や雑巾がけ、布団の上げ下ろしなど、軽いスポーツと同等の消費量です。
日常生活の工夫一つでエネルギー消費量は増やせます。
健康づくりのための身体活動
厚生労働省は生活習慣病の防止に必要な運動量の目安を示した「エクササイズガイド2006」を公表しました。
今回の指針においては、身体活動の強さを「メッツ」という単位で表してします。この「メッツ」は座って安静にしている状態を「1メッツ」とし、身体活動が安静時の何倍に相当するかを示すもので、普通歩行は「3メッツ」に、ジャズダンスは「6メッツ」に、エアロビクスは「6.5メッツ」相当します。
そして、この運動の強さの単位である「メッツ」に実際の実施時間を乗じたものが、「個」とされています。
安静状態(1メッツ)を1時間で1個とし、例えば3メッツの普通歩行を1時間行った場合は、3個とし、6メッツのジャズダンスを1時間行ったら6個、30分行ったら3個とされます。
ただし、今回の指針において身体活動を実際に計算する場合は、3メッツ以上の運動や生活活動しか計算しないようになっています。(1メッツの安静状態を何時間続けても計算されません!)
今回の指針では、3メッツ以上の運動・身体活動を1週間に「23個以上」行い、そのうち「4個」は運動を含めるよう提言されています。
1個とされる運動・身体活動は下記のようになります。
これらを1個として、1週間に23個以上実施すれば、消費エネルギーが増加し、身体機能が活性化することによって、糖や脂質代謝が活性化し、更には内臓脂肪が減少し、その結果、血糖値や脂質異常の改善、血圧の正常化により生活習慣病の予防につながるもとの考えられるとされています。
また、今回の指針では、メタボリックシンドローム(内臓脂肪症候群)の該当者や予備軍の方のための運動量について示され、その中で、腹囲1センチメートルの減少は内臓脂肪1キログラムの減少に相当し、その減少のためには、運動によるエネルギー消費量の増加や食生活によるカロリー摂取量の減少と併せて約7,000キロカロリーが必要となってくるというものです。
つまり、1ヶ月かけて腹囲を1センチメートル減少させるためには、1日約230キロカロリーのエネルギー消費量の増加かエネルギー摂取量の減少が必要となり、今回の指針では、運動と食事改善の併用が効果的であるとされています。
また、「健康づくりのための身体活動量」として、週4個以上の「運動」が目標とされましたが、内臓脂肪の減少のための身体活動量には、週10個以上の「運動」が必要とされています。
目標設定のためのチェックシートを付けています。
1日あたり減少させるエネルギー量の試算してみてはどうでしょうか。