東京箱根間往復大学駅伝競走は、通称「箱根駅伝」として広く知られています。
1920年より毎年1月2日と翌日3日の2日間にわたり行われる関東地方の大学駅伝の競技会です。
関東学生陸上競技連盟が主催し、読売新聞社が共催しています。
出場校は、原則として、関東学連の加盟大学から、予選会を通過した20校で、これとは別に出場校以外の競技者により編成された連合チームが参加します。
コースは、東京都千代田区大手町の読売新聞東京本社ビル前をスタートし、国道1号を、鶴見、戸塚、平塚、小田原の各中継所を経て、神奈川県箱根町の芦ノ湖までの往復のコースとなっています。
距離は、往路107.5 km、復路109.6 km、合計で217.1 kmです。
1月2日に東京から箱根への往路を、1月3日に箱根から東京への復路を走ります。
箱根駅伝は新春のスポーツ行事として人気が高いものとなっています。
往路
1区
スタートを告げる区間である1区は、全チームが一斉に走り出し、序盤は平坦な道なため集団になってお互いに様子を伺いながら並走する時間が続きます。
この1区は、2区にエースが控えていることもあり、順位よりも、トップとのタイム差が重要になります。
こうした1区での注目は、スタートから約18.3キロメートルの地点にある多摩川に架かる444メートルの「六郷橋」での攻防です。
六郷橋は、上り坂と下り坂があり、特に下り坂は選手にとって、ペースを上げるのに有利なポイントとなります。
そのため、六郷橋の下り坂で繰り広げられるレースの行方を左右する先頭集団の駆け引きが、この区間の最大の見どころの一つです。
2区
鶴見中継所からスタートする2区は、箱根駅伝の5区間の中で走る距離が一番長い区間です。
前半はフラットなコースが続きますが、半ばを過ぎた、13㎞地点では、1500メートルで30メートルを上りきる「権太坂」、更には、ラスト3キロメートルには40メートルを上りきる「戸塚の壁」などアップダウンが繰り返されます。
体力、精神力、勝負勘といったすべての要素が求められ、各チームのエースが起用される傾向が多いことから、「花の2区」と呼ばれています。
この2区では、過去には何人もの選手を一気に抜きさる「ごぼう抜き」による大逆転なども数多く見られています。
3区
戸塚中継所で襷をつないだ3区は、藤沢・茅ヶ崎を経て、平塚市に至る区間です。
前半の9キロメートルは60メートルをゆるやかに下る坂道が続くコースになっています。
11キロメートル地点を過ぎると、海沿いの国道134号線へ合流し、正面に富士山、左側に相模湾といった素晴らしい景色を見ることができます。
ただし、この海沿いのコースでは相模湾からの風の影響を受けやすくなっていますので、前半でいかに体力を温存するかがポイントとなると言われています。
4区
4区は、海沿いの平塚中継所から山の麓の小田原中継所まで至るコースで、全体的には平坦で短いコースとなっています。
前半の海沿いのコースは、海沿いには「西湘バイパス」が通っており、駅伝で走る東海道はそれより一本内陸側の道路となっているため、3区よりは海風の影響を受けにくいと言われています。
ただし、10の橋を通過するということもあって、細かいアップダウンが続く、ペースを保つのが難しいとても複雑なコースとなっています。
小田原中継所では往路最終区の5区での山上りに備え、各校どのようなポジションで襷を繋ぐのかが注目されます。
5区
往路最終区である5区は、気温差や地形の高低差もあり、最大の難所とも言われている上りの区間です。
コースは、小田原中継所から国道1号線を南下し、早速、山登りが始まります。
箱根の温泉街を通り抜け、7キロメートル地点にあるヘアピンカーブを経て、15キロメートル地点にあるコースの最高点である標高約874メートルまで一気に駆け上ります。
そして、この最高地点を越えると一転して、4キロメートルにわたり下り坂が続くため、上りはもちろん、下りに入ってからの走りも重要な区間となっています。
箱根神社の大鳥居をくぐるとフィニッシュの芦ノ湖はもうすぐです。
この5区をどう乗り切るかは、往路優勝のみならず、総合優勝の行方を左右します。
復路
6区
復路の最初の6区のスタートは、時差スタートとなり、まずは、往路優勝を果たしたチームが8時にスタートします。
その後、往路終了時のタイム差に従って各チームが順番にスタートしていきます。
往路終了時に先頭から10分以上の差がついたチームは8時10分、一斉にスタートすることになります。
例えば、5区での「山の神」と言われる特出した選手が現れる年は、10チーム以上が一斉スタートとなることもあります。
この6区は、朝8時にスタートするといった時間帯、そして、冷え込みの激しい山中のコースであることに加えて、急カーブを高速で駆け下りるため、足への負担も大きいコースとなっています。
芦ノ湖をスタートして、最初の4キロメートルの上り坂を登り切ると、残りは標高差840メートルの山下りとなります。
この間、選手たちは100メートルを14秒台というハイスピードで駆け下りることになりますので、脚力を削りとる難しい区間が続きます。
箱根湯本駅を過ぎてからの平坦なラスト3キロメートルで失速する選手が多いのは、ここまでの下りで蓄積した疲労があまりにも大きいためと考えられます。
こういったことから、箱根駅伝屈指の難コースと言えるでしょう。
7区
小田原中継所から平塚中継所にいたる7区は、序盤を除くと平坦なコースが続きますので箱根駅伝の中では走りやすいコースと言われています。
しかしながら、小田原中継所をスタートする午前9時頃は、箱根の山から吹き降ろす風で冷え込んでいますが、中盤以降は次第に気温が上昇してきますので、全区間の中で最も気温差が激しい区間となっています。
そして、9キロメートル以降は、橋を渡る際のアップダウンが続きますので、選手たちの体力を奪っていきます。
この7区に力のある選手を置くことが、優勝への鍵となっているようです。
8区
平塚中継所でタスキを受けた選手は8区の湘南の海岸線を駆け抜けます。
海岸線を走るため、概ね平坦なコースですが、強い海風に直面します。
浜須賀交差点で海岸線に別れを告げると、今度は上りが待っています。
最大の難所は15.5キロメートルの藤沢橋交差点を過ぎてからの「遊行寺の坂」です。
ラストに待ち受けるこの坂は、距離は約400メートルで、最大勾配は10%を超え、過去、数々のドラマを演出してきた区間です。
優勝争いも見えてきました。また、シード権獲得の行方もこの8区がカギとなっています。
9区
「花の2区」を逆走する9区は23.1キロメートルで復路の最長区間です。
襷を受け取ると、すぐ下り坂があり、起伏が多い区間が続きます。ここでオーバーペースになってしまうと終盤の失速を招くことになりますので、ここで自分のペースを巧く掴む事が重要なポイントとなってきます。
保土ヶ谷駅前をすぎると、平坦なコースが続き、横浜駅を過ぎ、生麦駅以降はゴールの鶴見中継所までほぼ一直線のコースとなります。
この9区に実力のあるランナーを配置できるかどうかで勝負の行方が大きく左右されるといわれています。
また、レースも終盤となり、順位争いも熾烈になってきます。
復路の繰り上げスタートは、先頭走者通過から20分となっており、鶴見中継所で繰り上げスタートしてしまいタスキをつなぐことができず涙する光景が幾度も見られてきました。
順位争いやシード権獲得を目指した走り、襷をつなぐ走りなどそれぞれのドラマが繰り広げられます。
10区
最終区間の10区は、東京に戻り、国道1号線の起点である日本橋経由のコースを走り抜け、東京大手町のフィニッシュに向かいます。
コースとしては比較的平坦で走りやすくなっていますが、距離が23キロメートルと長く、気温が上がってきてますので、ハイペースで走るのは難しい区間となっています。
また、難所である、「六郷橋」や「新八ツ山橋」といった厳しいアップダウンも選手たちに立ちふさがってきます。
長い歴史に育まれた箱根駅伝を走るために日々の練習に青春をかけてきた若きランナー達、今年の栄冠が輝くのは、どのチームでしょうか