1日1万歩

「1日1万歩歩こう!」とよく言われています。
果たしてどういった根拠があるのでしょうか?

このサイトの「エネルギー所要量」や「エネルギー消費量」のページでは、例えとして「年齢30歳の女性、身長160センチ、体重56.32キロ、仕事は1日6時間の事務職」で試算しています。
これからもこの女性を例えとして計算していきます。

まず、エネルギー摂取の面から見ると、この女性の1日のエネルギー所要量は「エネルギー所要量」のページで計算したとおり、2077kcalです。(ダイエット等は考慮しないでいます。)

次にエネルギー消費の面から見ると、この女性が何もせず、じっとしていても生命の維持のために消費するエネルギー(基礎代謝量)は「エネルギー所要量」のページの別表「年齢階層別基礎代謝基準値」から計算して、1222kcal(21.7×56.32キロ)です。

そして、6時間の事務で消費するエネルギー量は「エネルギー消費量」のページで計算したとおり、488kcalです。
とりあえず、ここまでで余分なエネルギー量は、
2077kcal-1222kcal-488kcal=367kcal
となります。


「とんでもない!寝ることや仕事以外にもいろいろと家事とか忙しい!」といった声が聞こえてきそうです。
そこでどのくらいの家事を行っているか調べてみると、総務省の「2001社会生活基本調査」がありました。
25歳から34歳までの妻(ここでは既婚者の設定となりますが・・・)の家事の平均時間は、6時間51分(411分)です。

長い順からいくと、
(1)食事の管理      2時間13分
(2)乳幼児の世話     2時間
(3)住まいの手入れ、整理    56分
(4)買い物           47分
(5)衣類の手入れ        38分
(6)その他            8分
(7)子供の教育          6分
(8)介護             3分
となっています。

これらの家事で消費するエネルギー量を計算してみようと思います。
しかしながら、「エネルギー消費量」のページの別表「動作強度の目安」を見てもらえば判るとおり、「料理」が「1.4」、「身支度」が「1.5」、「洗濯」が「2.2」、「掃除」が「2.7」、「雑巾がけ・布団の上げ下ろし」が「4.5」と、家事といっても様々な強度の動作の複合となっており、簡単に計算できそうにありません。
そこで家事全般の動作強度を「2.0」と仮定して計算してみますと、
2×(21.7÷1440)×56.32×411=697.64kcal
になります。
そうすると、先ほどの367kcalをオーバーして余分なエネルギーは体内に蓄積しないことになります。
しかしながら、身の回りを見渡してみると、簡単便利な惣菜・外食、電化製品の氾濫で摂取カロリーの増加と家事でのエネルギー消費量の減少は否定できないところです。

そこで通常、「1日1万歩」の根拠となっているのが、摂取カロリーの増加と消費カロリーの減少を考慮しないで、先に計算したエネルギー所要量―基礎代謝量―仕事等でのエネルギー消費量のオーバー分(先の計算では367kcal)の消費を身近にできるウォーキングで消費すると言った考えによるものだと思います。

では、367kcalを消費するためにどのくらいウォーキングしなければならないのでしょうか?
「エネルギー消費量」のページの別表「動作強度の目安」は厚生労働省の数値ですが、ここでの区分は、「散歩・買い物でゆっくり歩く(2.2)」と「急ぎ足(4.5)」の区分しかありません。ウォーキングは多分「急ぎ足」に区分されると思いますのでこの数値を使って計算します。
通常、歩くスピードは時速4キロメートルといわれ、その際の歩幅は身長の約40%といわれています。また、ウォーキングは時速5~6キロメートルで、身長の50~60%の歩幅を使って行うよう推奨されています。
30歳、体重56.32キロの女性の「散歩・買い物でゆっくり歩く」と「急ぎ足」の1分当たりのエネルギー消費量を計算すると、

■「散歩・買い物でゆっくり歩く」
  2.2×(21.7÷1440)×56.32=1.8671kcal
■「急ぎ足」
  4.5×(21.7÷1440)×56.32=3.8192kcal
となります。

367kcalを消費するためにはそれぞれ、196分間、96分間歩かなければならないことになります。

その間の歩いた距離は、
■「散歩・買い物でゆっくり歩く」(時速4キロメートル)
  13066メートル
■「急ぎ足」(時速6キロメートル)
   9600メートル

「散歩・買い物でゆっくり歩く」と「急ぎ足」の際の歩幅をそれぞれ身長の40%、60%とすると、身長160センチのこの女性の場合、「0.64メートル」と「0.96メートル」になります。
この歩幅で先ほどの歩行距離を割ると必要な歩数が出てきます。

■「散歩・買い物でゆっくり歩く」(時速4キロメートル)
  13066メートル÷0.64メートル=20415歩
■「急ぎ足」(時速6キロメートル)
   9600メートル÷0.96メートル=10000歩

偶然にもピッタリ!ですが、こういったところから「1日1万歩」の数値が出てきたのかもしれませんね。
上の試算で行くと、ゆっくり歩いた場合は、20000歩必要かもしれません。

では、実際意識して歩く(ウォーキングする)となると、日常生活や職場で歩く距離を差し引かねばなりません。

自宅でゆっくりしている場合でも2500~3000歩ほど歩きますし、仕事をすると4000~7000歩(通勤を除く)ほどは歩きます。
事務職で5000歩程度といわれていますので、職場では歩幅は身長の40%程度で、速度も時速4キロメートル程度でしょうから、この女性の歩行距離と歩行時間は

5000歩×0.64メートル=3200メートル
3200メートル÷時速4キロメートル=0.8時間=48分
となり、消費エネルギーは
1.8671kcal×48=89.62kcal≒90kcalになります。

ウォーキングで消費するエネルギーは、
367kcal-90kcal=277kcal

先の計算をもう一度やり直して、
277kcal÷3.8192kcal/分=73分
時速6キロメートル(分速100メートル)のウォーキングでは7300メートル歩くことになり、この際の歩幅は0.96メートルですので
7300メートル÷0.96メートル=7604歩
意識してウォーキングすることになります。


最終的には、日常生活・仕事で5000歩、ウォーキング(73分間)で7600歩が必要との計算になります。

何かと忙しい現代人にとって、73分間のウォーキング時間を確保するのは大変です。
通勤を自転車から速歩に代えたり、職場でエレベーターから階段に代えたりのひと工夫で消費エネルギーを増やすことが必要ではないでしょうか。


厚生労働省から「エクササイズガイド2006」が出されました。
これでは新しい指標として「メッツ」という単位が提唱されています。
例えば、歩行に関して言えば、

ゆっくりとした歩行(54m/分未満)      2.0
普通歩行     (平地を67m/分)     3.0
歩行       (平地を81m/分)     3.3
やや速歩     (平地を94m/分)     3.8
速歩       (平地を95~100m/分)   4.0
かなり速歩    (平地を107m/分)    5.0

といった数値(1時間あたり)です。

この際のエネルギー消費量の計算は、メッツ×1.05×体重×時間で計算できます。
「動作強度の目安」においては、「散歩・買い物でゆっくり歩く」と「急ぎ足」の区分しかありませんので、エネルギー消費量を計算する場合は、この新しい単位である「メッツ」を利用しても良いと思います。
ちなみに、1分当たりのエネルギー消費量は、

ゆっくりとした歩行 2.0×1.05×56.32÷60=1.9712kcal
普通歩行       3.0×1.05×56.32÷60=2.9568kcal
歩行           3.3×1.05×56.32÷60=3.2525kcal
やや速歩       3.8×1.05×56.32÷60=3.7453kcal
速歩          4.0×1.05×56.32÷60=3.9424kcal
かなり速歩      5.0×1.05×56.32÷60=4.928kcal

このページは、サイト全体の流れで、以前から使用している「動作強度の目安」を元に計算しています。
そのため、通常の歩行を「散歩・買い物でゆっくり歩く」として区分する一方で、その際の速度、歩幅をそれぞれ時速4キロメートル、身長の40%と「ゆっくり歩く」にしては大きな数値を使用しています。(矛盾しています)
ご自分に合わせて計算してみる際には、新たな指標である「メッツ」の「速歩(3.9424kcal)」と「ゆっくりとした歩行(1.9712kcal)」として時速3キロメートル、歩幅を身長の35%として考えるのが良いのかもしれません。

More from TriCraft

Sponsored Link